ごま対談劇団代表・ごまのはえ対談集。第3回ゲストは上田誠さん(ヨーロッパ企画)です。 |
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第3回ゲスト:上田誠さん
1979年11月4日生まれ。99年「ヨーロッパ企画」を立ち上げ、作・演出を手がける。現在、工学部に籍をおく大学生。
9月28日〜30日、『神戸短編演劇祭』参加。12月に公演を予定。
「僕は、マツタケのような作演になりたいです(本人談)」。
ごまのはえ(以下ごま)
共通の(好きな)本が、清水義範と筒井康隆ということで。清水義範のどこが好きなの?
上田さん(以下上田)
最近になって思うのが、文体ですね。当時は、アイデアから入った感じなんで。『(永遠の)ジャック&ベティ』とか。
ごま
『国語入試(問題)必勝法』とか!
上田
そうです、正にそのあたりです。
ごま
スゴい流行ったよね。『国語〜』は本当に当たったからね。あと『シナプスの入江』って知ってる?
上田
あっ、読みましたよそれ。
ごま
あれも面白かったよね。そういえばこの間の芝居(「ヨーロッパ企画」『サマータイムマシンブルース』)の伏線の張り方もあれに似てたような気が。だんだん深くなっていくところとか。
上田
そうですね。やっぱり理系的な小説が僕は好きなんでしょうね。
ごま
確かに文学好きが文学的な小説を書いても面白くないのかも。案外、医者が書いた小説とかの方がはるかに面白いのかもね。やっぱり知らない情報を教えてくれないと話にならないし、そーゆー面で見ると小説って副業なんかなーとも思う。
上田
確かにエッセイも体験エッセイとかの方が読んでて面白いし。
ごま
理系かあ。安部公房も理系やし。あ、『パラサイト・イヴ』見た?あれを書いた瀬名秀明も理系やんね。
上田
あ、それは見てないんですけど。うん、やっぱり美しさですね、話の構成の。僕はそーゆーところに魅かれますよね。
ごま
だいぶ前に「ベトナム(の笑い声)」の丸井さんと、「笑いは最終的にはナンセンスなものになるだろう」という話をしたことがあって。「笑い」というのが構造、デザイン的なものになるんじゃないかというふうなことをね。筒井康隆のショートショートのなかであったんだけど、「電車の中吊り広告を見てみんなが笑いだす」ってやつ。
上田
ああ、ありましたね。
ごま
宗教の儀式でも、それを信じてない人達から見ると何かすっごい笑えるやん?そーゆー意味で言うと、「笑い」は最終的には美学、つまりデザイン的なものに行き着くんじゃないかと・・・その、物事から意味をはぎとっていく方向に行くんじゃないかなと。そうなったら「笑い」のセンスに必要なのって、理屈の勘違いをどれだけ作れるかとかではなくて、最終的には美学の要素が出てくるんじゃないかと思うのね。
ごま
僕も結構、清水義範を読んでた方なんだけれども、大学時代に入ってからは全く読まなくなったのよね。(作品として)何かを書く以上、データが無いと書けないだろう!みたいな気持ちが強くあって。「もっと難しいのを読まなきゃ!」みたいなね。だから渋澤龍彦とか荒俣宏とかを読まなきゃいけないな、なんて思ってしまって。
上田
やっぱり不安ですものね。
ごま
うん。後ろ盾がないとやっぱり書けないでしょう。専門の知識持ってる奴には適わないよね。その情報を横に移されただけでスゴイ新鮮さってあるやん。
上田
えぇ、えぇ。
ごま
だって(自分の)産まれ育ちにしたってねぇ、住宅街に住んでて、親は離婚もへったくれもないし。(自分自身の体験だけをネタに書いても)良いのが一作は書けるだろうけど、2作目からはヒドくなると思う。
上田
連作としてはね・・・。やっぱり僕も不安なので、書く前に相当読みますね。
ごま
この前の芝居の時も相当?
上田
えぇ。実はこの間の芝居で、最後の方に一回泣こうっていう話も出てたんですけど、それはやっぱりズルいということでやめになったのですが。
ごま
うん?なんでズルいの?
上田
いや、だってね、泣いたら絶対にお客さんは喜ぶから・・・。なんかそれってあまりにも媚びてる気がしてしまって。
ごま
うわぁ〜、うそぉ〜。恐いな〜。
上田
まー、明らかにズルいのはやめようかなと。
ごま
それを言うなら、瀬戸中くん(「ヨーロッパ企画」の役者さん)明らかにズルいじゃないの。「せっとん」さぁ!
上田
アハハハハ!
ごま
筒井康隆モノは?
上田
僕は『エロチック街道』。あれが好きですね。実は言うほど彼の作品を読んだことがなくて・・・でも初期の作品は割とSF的な雰囲気があるので、今でもよく読みますね。
ごま
『ベトナム観光公社』とか?
上田
あ、あと『あるいは酒でいっぱいの海』っていう短編集とかも。
ごま
『東海道戦争』とか。
上田
そーですね、その辺の頃のをよく読みますね。未来の街の描写がスゴイキレー!みたいな感じがして。
ごま
でも正直言って今まで聞いた作品は僕はあまり好みじゃないなー。どちらかというと人間臭さのある『鍵』とか『2度死んだ少年の話』とか『筒井順慶』とか、本当にドロドロしているやつの方が。
上田
やっぱりそれって理系・文系の違いがでてますね。
ごま
あと、音楽はどんなのが。
上田
あの、インディーズ・ポップとかが。ごまのはえさんも、「ナイアガラトライアングル」とか「はちみつぱい」が好きなんですよね?
ごま
ウン!すっごい好き!あとねー、渚十五もいーよー!ペット・サウンズと、ドノヴァンっていうイギリス人と、ヴァン・ダイク・パークスという人の『ソングサイクル』の3つの要素がバッチリ合っていて。
上田
イチ押し?
ごま
ウン!もう何年も前からイチ押しなんだけど、ホンマにイイ。めっちゃイイで彼は!
上田
おお!
ごま
でも、この対談アレやね。固有名詞ばっかりやね。
上田
バンバン出まくってますよね。ホンマにこれってうっとうしい対談でしょーね・・・読んだことがない人を置き去りにしてるって感じで・・・。
ごま
うん、まぁねぇ。でもね、こーゆーふうなのがいいんやって!
ごま
あの・・・ブラッドベリとかは全然読まないの?
上田
読んだことはあるんですけど、なんか肌に合わないですかねぇ。
ごま
あ、そーなんだ。『ブレードランナー』とか?
上田
映画も見たし、原作も途中まで読んだんですけど・・・。
ごま
なんかゴチャゴチャしてるよね、関係性とか。
上田
そーですね。あーゆーふうなゴチャゴチャした未来ってゆーのも嫌いじゃないんですけど・・・。
ごま
じゃあ、スティーブン・キングは?『痩せゆく男』とか『シャイニング』を書いた人だけど。
上田
あぁ・・・全然読まないですねぇ。
ごま
そう?面白いよスティーブン・キングは。構成もしっかりしてるしね。黒沢明もそーなんだけど、単純だがしっかりと緻密に書けてるところがスゴいしね。
上田
あぁ・・・職人芸?
ごま
うん、そう、職人芸!
上田
いいなー。僕も身につけたいなー。
ごま
いやいや、何を言ってるの!君はあるよ、君はあるよー。
上田
いやいやいや!何を言うたはるんですか!無いですよ。
ごま
いーや。君は本当にそーゆーところはしっかりしてるからね。
上田
いやいや・・・あの、僕は(ニットキャップの公演は)『実録S・M・A・P秘話(改訂版)』しか見たことないんですけど、この前のラストシーンみたいな感じの作品を毎回したはるんですか?
ごま
この間のは珍しいかなー。今までのニットキャップや「ヨーロッパ(企画)」、「(劇団)衛星」の芝居をずーっと見てきた、知り合いの女の子が言うには、「ニットキャップのダメなところは、動機がちょっと文学的すぎるところかな」って言うのよ。でも、「あー、そうかもなー」と思ってしまって・・・。
上田
行動の動機ってことですよね?
ごま
うん、それが喜怒哀楽によるものじゃないということなんだけれど。
上田
あぁ、ちょっと劇的というか。
ごま
うん。うちの芝居の、行動の動機というのが「退屈と戦う」というか・・・宮台真司風に言うと「日常と戦う」みたいになるんだろうけど、そーゆーところに寄りすぎちゃってて、実感できない人には見ていて面白くないんだろーなー・・・。
上田
「共感」ですよね?
ごま
うん・・・いやあ〜。
上田
ちょ、ちょっとどうしたんスか?な、なんかスゴい表情してますよー?うわぁー!
註:この対談の直前、ごまのはえは『サマータイムマシンブルース』を観劇。そのあまりの面白さに同業者として激しく動揺ならびに焦燥。「めっちゃ悔しい」「ムカつくわ〜」連発。対談中もしきりに上田氏に羨望の眼差しを注ぐ。
ごま
高校の時には、周りに筒井康隆読んでる人はいなかったの?僕の周りには結構いたけど。
上田
いやぁ、そんな奴いませんでしたねぇ・・・。僕、H高校行ってたんですけど、あそこ偏差値低かったんですよね。いわゆる「バカ高校」ですわ。
ごま
「バカ高校」ってなんかスゴいねぇ。アハハハハ!
上田
スゴかったんですよ。なんせ授業中にドンジャラしてましたもん。勉強しないで遊んでばっかりいましたからね。
ごま
ドラえもんドンジャラ?
上田
そーですそーです。
ごま
僕らはアラレちゃんドンジャラやったねー。「デカチビ光線銃」とかの役があって結構面白かったなー。
上田
アハハハハ!
ごま
あのー・・・なんか、「セックスを描く」っていう気はないの?
上田
いやぁ〜、どーなんですかねぇ・・・う〜ん。やっぱり劇団員もお客さんも嫌がるので・・・えぇ。
ごま
ふーん、俺はね、しょっちゅうね、性的な部分を見せるのよ。「セックスを笑う」というか。
上田
なんかねぇ・・・あの、その・・・恥ずかしいんですよ。ダメなんですよ。まだお子ちゃまなんでね・・・。
ごま
つくづく思うのがさぁ、ニットキャップはスタイルを明確に出せていないし売れてないのよねぇ・・・「ヨーロッパ企画」さんは、そこの部分はバッチリできてるよねぇ。
上田
まぁそーですね。うちは割とポップなイメージですよね。
ごま
書こうと思った動機って何?俺とかは登場人物に、自分が持っている気持ち、感情を重ねて、それを表現したいから台本や小説を書いたりしているんだけれども。
上田
いやぁー。僕はただ単純に、お客さんを楽しませたいだけですねー。
ごま
げえぇー!ウッソぉー!スッゲぇー!!
上田
不毛な動機で・・・。
ごま
いや、でもスゴいわ。僕もお客さんを楽しませたいという気持ちはもちろんあるよ。だけど根底には自分の行き場のない感情とかがあるけれどね・・・。
上田
まぁ、だからこそお客さんが楽しんで帰れなかったら本当に全く無意味なものになるわけですけどもね。
ごま
あぁうん、それはそーだろうけど、でもこの間の芝居はマジで良かったよ!面白かったー!
(立ち会い人・重松)あ、もう(46分の)テープ終わります、表も裏も。
ごま
げっ、嘘や!マジで?
上田
いやぁ、良かったんスかね?こんなんで。
ごま
いやいや、俺はこーゆーの結構好きよ!うだうだうだうだしゃべってんの。
上田
アハハハハ!
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