第8回ゲスト:杉山準さん
1965年8月23日生まれ。演劇プロデューサー。
今春、「さらんプロデュース」にて公演を予定。
「『バナナ』というお芝居を、ごまのはえくんと一緒にやります」。
ACT1:情報の取捨選択。
ごまのはえ(以下ごま)
僕が高校生の時に『アエラ』と『SPA!』ができたんですよ。月刊誌の情報を週刊誌に移したというコンセプトの物だったんですけど、今まで月刊誌を読んだことがなくて、それを読んだ時に「あっ、こーゆーの読みやすいなぁ」と思ったんですよ。僕の印象では、TVというのは情報が集まってくるのが一番遅いところで、その次に『SPA!』とかがきて、その次に月刊誌がくるのではないか。そう思ってたんです。で、ある方に聞いたら「もっと街に出なさい」と。街に出ていろんな人と話をしたり、店先の看板を見たりしてると、もっと時代の状況がよく分かるよ、と。小劇場でやっていく以上、TVで放送された内容の後追いをしていたら全然価値が無いなぁと思っているので、杉山さんにその情報の取り方みたいなのを教えてもらいたんですが。
杉山準さん(以下杉山)
あ・・・ハイ。いや、でも僕も同じ意見なんですけど・・・。
ごま
アハハハハ。
杉山
例えば雑誌を編集する人の気持ちになってみると、やっぱり時代に向けた面白い内容の事を書かないと売れないわけで。で、ちょっと先取りしないと。TVも新しいニュースや新しい事をちょっと先取りしてやってないと、「もうこんなのどっかで見たよ」と言われたら終わりなわけでね。
ごま
「ちょっと」かぁ・・・。
杉山
うん。だから作るほうは一所懸命、取材したりいろいろとアイデアを出して頑張って情報を得てるわけね。ところが、情報を熟成して出す間にタイムラグが生じるし、またTVだと放送上の規定もあって、いろんな事がどうしても出し辛くなるところがあるから。速度の面で言うと雑誌のほうがやっぱり早いかもね、と思ったりするんだけど。
でも、演劇の場合はどうかというと、演劇は雑誌よりも更に制限が少ないし、全裸になっても大丈夫だし、ホント表現としては何をやっても大丈夫だよね。放送禁止用語とか言っても大丈夫だし。そしたら、そういう人達がTVや雑誌から情報を取って、ごちゃまぜにして更にそれを超えないものを作っていても全く価値が無いと思うんだよね。お金払って観に来てもらうからこそね。
だからそれ以上のネタというか、何かピンと来るものを探すべきだと思うし、常に意識して人と話したり、街中歩いたり、電車に乗ったりする事が大切なんじゃないかなぁと。
ごま
なるほど・・・。でも、みんな、その「ちょっと先」が知りたいと思ってるハズなんですよ。大きなお金につながりますから。常にそーゆーアンテナを張りめぐらせている人達は。それはつまり、自分達が情報の発信源になる。そーゆー事ですよね?
杉山
うん・・・あぁ、そうだよね。
ごま
そーゆー感性の磨き方みたいなんは、どーすればいいんでしょうね。
杉山
うーん・・・いやぁ、分かんないよね、正直。でも、映画やTVやファッションや、いろんな人達が同じ事を追求してるわけだよね。どれだけ地道に本をいっぱい読んだり、机に向かうのではない勉強をしたり・・・。人よりも幅広いアンテナを持つ事ができるかどうか、なんじゃないかなぁと思うんですよね。
あともうひとつ思う事が、「自分の心に聞く」という事。自分のなかでピンと来たものを信じてやる。で、もしかしてそれが既にやられてしまった事だとしても、それを信じて、繰り返してやっていくうちに段々と磨かれていくものだと思うし。
自分がクリエイターとして常にアンテナを広げて生活していく。やっぱりそれが大切な基本だと思うんですよね。
ACT2:次世代の顔はこれだ!
ごま
よく稽古に行く前にTVつけると、昔に流行ってた人気ドラマの再放送をしていて、少し見たりするんですが、見ていて思うのが「今から思えば、確かにこの役者の顔はあの頃の時代に合っていたかもなぁ・・・」と。例えば、大杉漣とか、江角マキコとか、中谷美紀とか・・・まぁ全部、後になってからそう思うわけなんですけれども。で、先程、僕のした質問に杉山さんはキチンと答えて下さって、質疑応答としては充分、申しぶんないのですが・・・。
杉山
はい・・・。
ごま
ここでですね、実はお聞きしたいのですが。山師的に杉山さんに放言をして頂きたいのですね。「次はコレだよ!!」みたいな。
杉山
うん・・・へっ!?わっかんないなぁ〜・・・
ごま
ズバッ!!「これから流行る女優の顔」とは!?
杉山
え、えぇ〜っ!?お、俺!???
ごま
ええ!是非ここはひとつビシッと杉山さんに放言をして頂きたいのですが!!(コーフン)
杉山
・・・あぁ〜、なるほどねぇ〜・・・思い浮かばないなぁ〜。
でもね、例えば「僕の友達の鈴木さん!」とか言ったって分かんないでしょう?「あの人しかいないっ!!」とかって言われてもねぇ。
ごま
いや、まぁ雑でもいいので。例えば大杉漣なら「渋いけど生活感のある顔」みたいな。浅野忠信なら「マンガ顔」というか「ヤングジャンプ顔」みたく、そんな感じで。
杉山
う〜ん。
ごま
僕は、男で「オナニー顔」が増えたかなぁって、そう思うんですよね。
杉山
・・・って、な、何ソレ!?
ごま
え?何かそんな感じしないですか?オナニー好きそうな顔立ちというか。
杉山
ど、どーゆー事なんだソレは?
ごま
へっ?あれっ?・・・しない?
杉山
フフフ・・・でもまぁ分からないけど、僕が次に来る顔というのは「男らしい顔」かなぁ?と。
ごま
・・・「男らしい顔」?
杉山
昔の江戸幕府が使節団の侍を送ったときに、チョンマゲで刀を腰に差してるんだけど、カッコイイのよそれが!!目がね・・・気合いの入った目がまたイイのよね。誇りというか、世界に通じる強さを持った顔。そういうのがこれから人気になるんじゃないかなと思う。例えば中田(英寿)とかイチローとか。
ごま
あぁー。
杉山
そういう「本物を感じさせる顔」が次に来ると思う。今の芸能界ってそういう顔した人いないでしょう。だから、次に来るのは「本物」だと思う。
ごま
ふーむ。
杉山
吉本興業とかはスポーツ選手と契約結んだりしてるでしょう?キーワードのひとつは「世界に通じるグローバリゼーション」だと思うわけ。もうひとつは「多様化」なんだけど。そのなかで日本人として世界に通じないとダメなわけだから、やっぱり「本物」じゃないとね。イチローにしろ中田にしろ、実際に世界に通じる実力があったからこそカッコイイわけだからね。この人達の顔がカッコイイのは、自信と風格に満ちた表情をしているからだと思うんだよね。
ACT3:小劇場に見出す価値。

ごま
えー、それでは最後に、「(演劇を)小劇場でやる価値があるか無いか」を。
杉山
いや〜、思うんですけど、やっぱり最後には、売れたい!成功したい!って思うでしょ?
ごま
ハイ。
杉山
でも、思うだけではダメで、思う以上に何かをしなきゃならないわけで。そうするにはどうしたらいいかというと、モノを作っている「作り手」にかえる事だと思うんですよ。基本にかえる。
作り手というのは、価値を創造しなきゃいけない。クリエイター、芸術家としては、価値を創造しないと無価値なわけだから。その、「価値を創造する」努力をしているかどうかだと思うんだよね。マーケティングをして、市場には無いものを創造していく、というのもひとつの手ではあるけれども、それだけではなくて、「価値を創造していく事をする行為」がすごく重要な事なのだと思う。
TVって何かと制約があるからいろんな事を試しにくい。メディアもそうだけどね。しかし演劇はそうじゃなくて、逆にいろいろと試す事ができるよね?しかも広い範囲で表現の自由があるから、そこでこそ、そういう「行為」をキチンとしていくべきだと思う。で、それを何百人かのお客様に続けて見せていく事によって、次第に明確に支持されて、熟成されて初めてちゃんとした仕事と言えると思う。そういう事をしないで、「今すぐとにかく売れたい」だけしか考えてない人は、すぐにでも東京に行って、プロダクションにでも入りなさいと。そういうちゃんと確立したルートがあるならばそこに行ったほうが早いし、そうする事が正解だと思うし。でも、そうでないのであれば・・・例えば「京都で小劇場でやる」という事は、もう、そこにしか価値は無いのね、創造者として。
でも、アマチュアは別。草野球と一緒で、楽しい事が目的だからね。既成の台本で芝居を打って、何人かの人に観てもらって、打ち上げして、「楽しかったね、またやろうね」で終わる。アマチュアはそれでいい。けど、「自分は表現者でありたい」「プロになりたい」と本気で思っている人は、その「プロになる」素は自分が創り得た、クリエイションした部分であるから、もうそうして行くしかないんだと思う。
ごま
なるほど。本当に今日はどうもありがとうございました。
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